ハイ・ライズ

ハイ・ライズ(2015年・イギリス)
原題:High-Rise
公開日:(英)2016年3月18日 (日)2016年8月6日
配給:(英)StudioCanal (日)トランスフォーマー
時間:119分

監督:ベン・ウィートリー
原作:J・G・バラード
脚本:エイミー・ジャンプ
出演:トム・ヒドルストン(ロバート・ラング)
   ジェレミー・アイアンズ(アンソニー・ロイヤル)
   シエナ・ミラー(シャーロット・メルヴィル)
   ルーク・エバンス(リチャード・ワイルダー)
   エリザベス・モス(ヘレン・ワイルダー)
   ジェームズ・ピュアフォイ(パンクボーン)
   キーリー・ホーズ(アン・ロイヤル)
   ピーター・フェルディナンド(コスグローヴ)
   シエンナ・ギロリー(ジェーン)
   リース・シェアスミス(スティール)
   エンゾ・シレンティ(タルボット)
   オーガスタス・プリュー(マンロー)
   ダン・スキナー(シモンズ)
   ステイシー・マーティン(フェイ)
   トニー・ウェイ(管理人ロバート)
   レイラ・ミマック(ローラ) ほか
製作:ジェレミー・トーマス
製作総指揮:ピーター・ワトソン
      トーステン・シュマッカー
      リジー・フランク
      サム・ラベンダー
      アンナ・ヒッグス
      ガブリエラ・マルチネリ
      クリストファー・サイモン
      ジュヌビエーブ・ルマル
撮影:ローリー・ローズ
美術:マーク・ティルデスリー
衣装:オディール・ディックス=ミロー
編集:エイミー・ジャンプ、ベン・ウィートリー
音楽:クリント・マンセル

鑑賞日:2016年8月23日
場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター3 D-6


■ ストーリー
ある高層マンションに引っ越してきたロバート・ラング(トム・ヒドルストン)、彼は医師であり、大学で教鞭も執っていた。

ジムやプール、スーパーマーケットなどあらゆる施設を兼ね備えたマンション──それは羨望の的であり、ラング自身もこの新たな生活に満足感と希望で満たされていた。
しかし、マンションの内状を知るにつれて漠然とした不安がよぎる。
マンションの上下関係は何階に住んでいるかで決定されていた。上層階の住民は裕福な生活を送り、低層階の住居では電気や水道などの供給が滞ることもあった。
ラングは最上階に住むアンソニー・ロイヤル(ジェレミー・アイアンズ)と会う機会を得る。アンソニーこそがこのヒエラルキーマンションの設計者でありオーナーだった。彼はこのマンションのシステムは完璧であり、住民は満足していると考えていた。
一方でラングは、低層階に住むリチャード・ワイルダー(ルーク・エバンス)がマンショへの不満を抱いていたことも知っていた。そこには確実にヒエラルキー闘争が存在していた。

マンション内では連日のようにパーティーが開催される。低層階でも上層階でも階級に合わせたようなお祭り騒ぎが繰り広げられる。そんな贅沢を繰り返す彼らの生活は徐々に破綻し始める。借金まみれのこのマンションへの流通、ライフラインの供給さえも止まるようになる。
物が腐敗し、ごみが溢れ、さらに階級闘争が激化することにより、マンション内部は崩壊の一途をたどる。酒、ドラッグ、セックス、そして殺人──死体とごみの中、ラングもまた欲望とともにハイ・ライズでの生活を営んでいく。

▶ 映画館環境
ヒューマントラストシネマ渋谷シアター3は座席数60と小さな劇場。スクリーンサイズも(ビスタサイズ)2.9×1.6m /(シネスコサイズ)3.7×1.6mと大きくない。座席は縦長に配置されているため、最後列だとやや迫力にかけるかもしれない。
今回ゲットした座席D−6は前から4列目の右端。段段がD列から始まっているので、D列以降を選択するべき。前の3列はかなりの見上げ。試しに最前列に座ってみたら、首がやばかった。ぱっと見はGの7、8が良さそうに思うが、少し遠過ぎで端過ぎるかも。
平日の昼間の上映にもなかなかの入り。E列は埋まっていて、Fも結構座っていた。その2列が真ん中でベストポジションとの触れ込みが多い。

▶ 作品レビュー
なにかと話題のトム・ヒドルストンでありますが、不思議と騒がれるほどのオーラは感じません(あくまで個人的意見ですけれど─)。とはいえ、「こいつがあいつを…」と勝手に失礼な妄想が膨らみ、無駄に体ばかりを見ていたような気がします。半ば、こういった無駄な楽しみを持って臨まないと、なかなか最後まで集中が続かない映画かもしれません。
内容は特別難解でもなく、設定も分かりやすくて興味深いもの。ただ、展開というか流れがかなり荒っぽい印象で、多少自分の頭の中で修正というか折り合いみたいなものをつけながら見ていかないと、途中で筋を見失うはずです。
マンション内のヒエラルキーという設定自体、現実社会にも少なからず存在するわけで、明らかに文明への警鐘、あるいは非難といった意図が盛り込まれているとすぐに分かります。
贅沢をくり返し督促状が届く状況、贅沢をくり返しマンション内にゴミがたまっていく状況、さらにはマンション内へのあらゆる供給が滞り上層階が優先され下層階がないがしろにされる状況、まったくもって他人事だとは思えません。この社会の行き着く先は、この映画のような階級闘争による殺し合いになるのかもしれない、と一瞬だけ思ってしまいました。
つまり、この作品は鋭い視点で描かれた社会派映画であるかのような印象を受けたりもするのですが、なかなかそうだと言い切れないところがあります。「もしかしたらそんな未来もあるかもねー」と軽い気持ち──半ば鼻で笑ってしまうぐらいな軽やかな仕上がりです。その軽さ捉え方にかなりの個人差があるかもしれませんが、私的な感情でいうと、英国らしい──あのモンティ・パイソンを彷彿とさせるような近未来に、言い知れない魅力を感じてしまいます。
ただ、世界観の構築がいま一つであり、中途半端な映像美──半端な格好つけ観が画面から滲み出ていて、手放しでこの作品を称賛することに躊躇いを覚えてしまいます。しかも、ストーリーテリングが荒々しいため、雑な作品とまで貶められてしまう可能性も秘めています。
ヌーヴェルヴァーグのような新風を巻き込もうとしたのか、ヌーヴェルヴァーグに対する憧憬でしかないのか……。はまればイカしてスタイリッシュな格好いい作品になったと想像できるだけに、やや残念に思ってしまうところもあります。
個人的な(酷い)意見を吐露してしまうと、トム・ヒドルストンの見た目と映画の見栄えが非常に似通っているように思ってしまいます。まぁ、この映画を見出したときから認識に偏りがあったわけで、結果それを最後まで引きずってしまった形です。できることなら、邪念が刷り込まれる前に見たかった映画です。もっとも、有名俳優にはあらゆるしがらみがつきまとうものであり、それでも作品の中に染まっていくのは、役者の力量と優れた演出によるものだと思うわけで、そうなると、この作品はそれほど褒められたものではないのかもしれません。
それでも個人的には結構好きな映画です。
ゴミと死体の中で廃れていくマンションは、自分がボロアパートでゴミにまみれて貧乏生活をしていたものと重なり、カネがないくせにタバコや贅沢な暮らしをやめようとしない姿は若かりし頃の自分と重なり、金持ち優先で電気や水道が供給されているところはまるで震災時の計画停電のようであったし、唯一セックス三昧というところは(残念ながら)自分とダブるところはなかったものの、その欲望はそれに近かったわけで──、自分としては非常に沁みてくる映画でありました。
といいつつ、映画の最後は全てを放置したような流れで(─原作がそうなのかどうかは分からないけれど)、最後の最後まで半端な作品だったという印象が拭えず、結局自分のこの作品への評価も最後にきて批判的にならざるを得ませんでした。
いい映画とは言えないかもしれませんが、繰り返しになりますが、好きな映画ではあります。でも、おすすめはできません。


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