さざなみ

さざなみ(2015年・イギリス)
原題:45 Years
公開日:(英)2015年10月23日 (日)2016年4月9日
配給:(英)Artificial Eye (日)彩プロ
時間:95分

監督:アンドリュー・ヘイ
原作:デビッド・コンスタンティン
脚本:アンドリュー・ヘイ
出演:シャーロット・ランプリング(ケイト・マーサー)
   トム・コートネイ(ジェフ・マーサー)
   ジェラルディン・ジェームズ(リナ) ほか
製作総指揮:クリストファー・コリンズ
      リジー・フランク
      テッサ・ロス
      サム・ラベンダー
      リチャード・ホームズ
      ビンセント・ガデル
撮影:ロル・クローリー
美術:サラ・フィンレイ
編集:ジョナサン・アルバーツ

鑑賞日:2016年5月9日
場所:シネスイッチ銀座 シネスイッチ1 座席数271 2階 P13


■ ストーリー
週末の土曜日に結婚45周年パーティーを控えているマーサ—夫妻─
月曜の朝、いつものようにポストを確認した妻ケイトは、夫ジェフに彼宛の手紙を手渡す。その内容は、かつてのジェフの恋人が雪山で遺体となって発見されたというものだった。それを読んだジェフは大きく動揺する。それを目にしたケイトは、死に別れた夫の元恋人の存在は認識していたものの、その絆がいかに強かったかということを思い知らされる。
その日から二人の間に違和感が生じ始める。土曜に予定されているパーティーの開催すら危ぶまれていく。
放っておくと夫のジェフは今にでも恋人の亡骸の元へと飛んでいきそうな雰囲気を、妻ケイトは必死に拭い去ろうとする。
土曜のパーティーはすでに設定された。二人を祝福するたくさんの来賓が集まってくるだろう。
果たして、二人は無事に結婚45周年を迎えることができるのだろうか─

第65回ベルリン国際映画祭、主演男優賞と主演女優賞をダブル受賞

▶ 映画館環境
シネスイッチ1の2階最前列やや右寄りの席。2階P−8がベストポジションかももしれない。残念ながらそこはすでに抑えられていた。ただ、右扉を出るとすぐに男子トイレがあるし、それほど悪くはない。とにかく2階の最前列こそが狙い目。1階であればIー12などがいい席かもしれない。
平日午後の上映。予想以上の混在、ほぼほぼマダムと呼ぶにふさわしい方々。あまりにも内容とロケーションにぴったりすぎて、笑えた。


▶ 作品レビュー
内容は非常に地味、映像の美しさも特にない、しかし内容は秀逸で2人の主演の表情をクロースアップにおいてもロングにおいても的確に捉え、感情に訴えるような構成になっている。小さな劇場(いわゆる単館)での上映であることがもったいなくもあり、同時に内容的に単館上映がふさわしいのかなと、矛盾した思いが交錯する、まるで物語の夫婦の心のように…。
昔の恋がきっかけに熟年夫婦が結婚生活の危機を迎えるという、それほど新鮮さもなく、大きな賞を取らない限り興味も沸かない映画(─あくまでも個人的な嗜好の問題─)であり、その賞を取ってしまったわけで仕方がないので見ようかなと思ったというのが正直なところ。
表情の描写が見事だと思いつつも、それだけで本当に自分の興味が最後まで続くのかどうか不安な内容だったし、実際に展開や結末において劇的なものは皆無であり、役者の細かな演技や人間の揺れ動く心などに対して興味を持てないというのであれば、全く楽しむことができない映画だと断言できる。
ただ、非常に簡潔にまとめられた映画であり、作品の意図を丁寧に読み取っていけば容易に映画の良さも理解できるだろう。この作品の本当の真価は、最後の最後に凝縮されているので、根気よく見てほしい。
この手の男女の関係を描いた映画において、常に実感するのは、男はバカで愚鈍のお人好し、一方、女は知性に溢れ鋭利で冷たい、というもの。この映画においてもその例に漏れず、そういった両極端の表現がうまくぶつかり合っているために、心に残る物語が生まれているのだろう。
後半に至るまで夫ジェフの描写は酷いもので、夫の変わりように逐一反応する知的な妻ケイトの繊細で鋭利な表現と比べると天と地ほどの差がある。これでよくダブル受賞に至ったものだと訝しむ─単にバランスを取っての授与ではあるまいかとの疑念…、ジェフ役のトム・コートネイはほとんど演技していないに等しい印象で、妻役のシャーロット・ランプリングの見事な演技ばかりが目につく。まさかトム・コートネイはシャーロット・ランプリングの引き立て役としての評価でもあるまい…。
最終的には、そんな不安を吹き飛ばすエンディングを提示してくれたと思っている。個人的な感情の流れを示しておくと、エンディングを迎えるまで妻ケイトの演技で夫ジェフへの憎しみや蔑みといった感情が生まれて、エンディングを迎えると夫ジェフの何だか不思議な熱い思いにこっちの心までが熱くなってしまって(少しだけ涙したり─)、これは感動の大エンディングを迎えるではとちょっとした期待を覚えるものの、妻ケイトの表情一つでそれをバッサリ断ちきられ、言いようのない鳥肌が全身を襲う…。
終幕後、この夫婦の行く末を観賞者がいかようにもつくりだすことは可能で、人それぞれ違ったアフターストーリーを描くことが予想される。完全に別れてしまうのか、再び強い絆で結ばれてゆくのか、嫌々ながらも共に暮らしてゆくのか、それとも陰湿な殺戮へと繋がってゆくのか…。恐らくオヤジとか野郎などはそんなのどうでもいいと思ってしまうだろうし、仮に家庭を持っていようがいまいが自らの身の上にこの作品を照らし合わせるようなことはしないと思う。まぁ、なんとか仲良くやっていくんじゃん、ぐらいの程度、それが男の性─。しかし、マダムの感情はいかばかりかと想像すると、なかなか恐ろしいものを感じてしまう。間違いなくこの夫婦の終焉を感じた。彼女らが終幕後に思いを巡らせるのであればそれは、いかに2人がけりをつけるかどうかでしかないだろう。そして、間違いなくこの物語を身の上に置き換えだろうし、そう思うと、銀座のマダムたちはいかなる行動を取るのか一抹の不安を覚えてしまう。カンフー映画のごとく、見終わった後でも抜け出せない余韻に浸り続けることがないよう祈るばかりである。
地味で派手さはない映画ではあるが、その影響力はかなり強いように思うわけで、それ故、やはりこれは単館にとどめておくべき映画かもしれないと思っている次第。
現代を象徴したリアルな熟年夫婦像がそこに再現されていて、主演男優賞と主演女優賞をダブルで取った理由がよく理解できた。

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