ルーム

ルーム(2015年/アイルランド・カナダ合作)
原題:Room
公開日:(米)2015年9月4日 (日)2016年4月8日
配給:(米)A24 (日)GAGA
時間:118分

監督:レニー・アブラハムソン
原作:エマ・ドナヒュー
脚本:エマ・ドナヒュー
出演:ブリー・ラーソン(ジョイ)
   ジェイコブ・トレンブレイ(ジャック)
   ジョアン・アレン(ナンシー)
   ショーン・ブリジャース(オールド・ニック)
   ウィリアム・H・メイシー(ロバート)
   トム・マッカムス(レオ)ほか
製作総指揮:アンドリュー・ロウ
      エマ・ドナヒュー
      ジェシー・シャピラ
      ジェフ・アーカス
      デビッド・コッシ
      ローズ・ガーネット
      テッサ・ロス
撮影:ダニー・コーエン
美術:イーサン・トーマン
衣装:リー・カールソン
編集:ネイサン・ヌーゲント
音楽:スティーブン・レニックス

鑑賞日:2016年4月16日
場所:TOHOシネマズ新宿 スクリーン6 C-6


■ ストーリー
誘拐され監禁生活が続き7年─
被害者のジョイ(ブリー・ラーソン)は、5歳になる息子のジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)と共に“部屋”の中だけで暮らしている。オールド・ニック(ショーン・ブリジャーズ)と名乗る男に囚われ続けていたのだ。
ジャックは一歩も外へ出たことがない。彼にとって世界は“部屋”だけ。テレビと母親からの情報だけで知識を身につけていた。“部屋”の中にあるものと母親、そしてオールド・ニック以外のものには接したことがなかった。
ジョイは長い間脱出することを思い続けていた。そして、息子のジャックが物心ついた時を待って、彼の助けを借りて、共に“部屋”から逃れることを計画する。
そして2人は“部屋”から逃げ出した。ジョイの両親・ジャックの祖父母─、感動の再会・新たな出会い─、変わり果てた現実・未知の世界への戸惑い─、様々な思いが去来する。
希望に満ちていたはずの“部屋”からの解放─、しかし、それは決してすべてが喜ばしいものばかりではなかった。
再び戻ってきた生活に喜びを感じていたはずのジョイの心は次第に曇りだし、慣れない世界に戸惑いばかりだったジャックは徐々に新世界に馴染んでいく。
“部屋”に戻ろうとせがむジャックをジョイは諭していたはずが、いつしか“部屋”に縛られていたのは果たして誰だったのか分からなくなっていく。
ジョイとジャックは“部屋”から解放されようと、もがき続ける。2人が本当に“部屋”から逃れることができるのかどうか、それは誰にも分からない。

アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」を映画化
第88回アカデミー賞・作品賞ほか4部門にノミネート、主演女優賞受賞


▶ 映画館環境
TOHOシネマズ新宿 SCREEN6 座席数119 スクリーンサイズ4.6×11.0m
C-6はスクリーン向かって左寄りの席。前に手すりの壁があり思いのほか狭かった。見上げであまり良い席とは言えない。E列あたりが一番いいかもしれない。最後列もありか─。いずれにしても、構成的に好きになれない劇場。
週末の夜上映ということもあり、席はほぼ満席。前評判の高さとともに、埼玉の女性監禁事件の件も手伝ったとみた。


▶ 作品レビュー
昨今、監禁事件をよく見聞きし、実際に自宅に帰ってきた例も我々は知っている。それ故に、この作品に対して、言い知れぬリアリティーを求めてしまう。その結果、何か物足りなさを覚え、あらゆる不自然さを感じてしまう。
健康な子供が無事に生まれ無事に育つ不自然さ─、そもそもそのことに違和感を覚えてしまうと、物語の趣旨が根底から崩れてしまうわけで、それが心にひっかかるとあらゆる粗を探してしまう。男と子供の関係性とか、7年と5年の運動不足とか…
監禁そのものを描いた作品ではないわけで、だから監禁における描写もあっさりとしていて、詳細もあまり描かれていない。結論から言うと、個人的には(矛盾を感じつつも)、閉鎖的な部分の描写があっさりしていてもかなり好感を持つことができたわけだが、そう思わなかった人も少なくないだろう。監禁ネタなのだからもっと閉鎖空間を描くべきという声も、観賞後に耳にした。しかし、そうなると、もっとドロドロで醜悪な話になりそうな気がして、サスペンス映画になってしまう気がしてしまうのだが、まさかこの作品に対してそれを求めて来ている観客もいるということなのだろうか。
正直、逃げ出すところもかなりあっさりしている印象で、随分簡単に外へ出た者だと思ってしまうのだが、まぁそこも描きたい最たる部分でもないわけだし、あっさりと言ってもそれなりにドキドキさせられ、半ば付属的な部分でありながらも非常によく作られていると思った。
主観的な表現の描き方が非常に上手くて、その表現を積み重ねながら徐々に見る者を惹きつけていく─例えば、ジャックを最初に保護した女性警察官の演技にしても、質問しながら徐々に事件性を感じ始めていく表現などが巧みであり、細かなリアリティーということよりも人目線での主観的な表現で物語の核心に迫っていく─そういった手法がブリー・ラーソンの主演女優賞に繋がったのだろう。
ジャック役のジェイコブ・トレンブレイを含め出演陣すべての演技や演出が秀逸だったように思う。オスカーを手にしたブリー・ラーソンが際立った演技をしていたとは決して思わない。それでもオスカーにふさわしいと感じた。それは、出演者全員の優れた演技が結集した結果だと思うばかりである。
監禁事件となると兎角焦点が当てられがちなのは、容疑者の変質性と感動の再会ということになると思うが、この作品においては容疑者の描写などはほぼ皆無であり、再会においても一瞬の感動でしかない。重要視されているのはあくまでも人と人の絆であり、その揺れ動くところを見事に描ききっている。
ストーリーは明らかに虚構だと思わざるを得ない。何らかの監禁事件を参考にしているだろうけれども、本当に話をベースにしているとは決して思うことができない内容。そうでありながら、非常に心動かされ、大いなる嘘と分かりながらも涙してしまう。それが劇映画の醍醐味といえばそれまでだが─。
有り得ないような純粋無垢のジャックという存在が大きいことは明らかで、彼を軸に人々の心が揺れ動くように演出されて、それに呼応するように見ているこちらの心も動かされていく。彼が発する言葉もまた重要であり、そういった意味でもこの脚本がいかに優れているかが窺える。原作者自ら書いた脚本というのも意味があったことだろうし、アカデミー賞の脚本賞にノミネートされたことも頷ける。
また、画面構成においても工夫が見られて、感情表現を重視しながら人物を極端に左右に寄せてみたり、あるいは天地を逆にしてみたり、内面を伝えるための絵作りに好感を持った。音楽も非常にうまく用いていたように思う。伝えたいのは画面の中にある主観だということがいやが上にも伝わってくる。
決して興味本位で監禁ネタを描いているわけではなく、人の心を必死に描こうとしているところが称賛を生んでいる要因であるように思う。“部屋”というタイトルでありながら、“部屋”そのものを描いているわけではなく、あくまで“部屋”に対する思いを描いた作品。感情表現をどのようにして捉えるか、それがこの映画を楽しむ鍵となる。


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