ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る

ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る(2014年・オランダ)
原題:Om de wereld in 50 concerten
公開日:(蘭)2014年11月27日 (日)2016年1月30日
配給:(Netherlands)Cinemien  (日)S・D・P
時間:98分

監督:エディ・ホニグマン
脚本:エディ・ホニグマン
制作:カルメン・コボス、ケース・ライニンクス
撮影:フフト・ヒルタイ
編集:ダニエル・ダニエル

鑑賞日:2016年2月16日
場所:ユーロスペース スクリーン2


■ プロット
ベルリン・フィル、ウィーン・フィルとともに世界三大オーケストラとして並び評されるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)。2013年に創立125周年記念ツアーを行い、1年間に世界各地で50の公演をこなした。それを、アムステルダム、アルゼンチン、南アフリカ、ロシアの公演を中心にまとめたものが本作。楽団員に対して深く切り込むと同時に、各地の観賞者にもスポットを当てながら展開していく。

▶ 映画館環境
ユーロスペースのスクリーン2は座席数145。
スクリーンサイズがスタンダード(1:1.37)2.9×3.9m、
ヨーロピアン・ビスタ(1:1.66)2.9×4.814m、
アメリカン・ビスタ(1:1.85)2.9×5.365m、
シネマスコープ(1:2.35)2.9×6.815m、
いわゆるミニシアター。
どこに座っても問題なく観賞できるので、結構好きな劇場。
平日午後イチの上映、客数もそこそこ。相当数の上映回数だったので、予想外の客の多さ。単館、ネームバリューといった要素が大きいのだろうか。

▶ 作品レビュー
ブルックナー交響曲第7番から始まり、マーラーをへて、ストラビンスキーで締めくくってくれたこの映画、個人的にはそれだけでもう満足。世界ナンバーワンと評されている楽団でもって、好きな楽曲を存分に流してもらえただけで、すばらしい映画だったわけです、みんなぜひ見てください、終わり! とはいかないでしょう─…

楽団員が語る楽曲・楽器への思いも、演奏を見に来た人が語る音楽への思いも、そしてまた、楽団員と観客との場外での交流など、非常に興味深いエピソードが展開される。
楽団員の語りで印象的だったのは、コントラバス奏者のエピソード。バイオリンなどよりも演奏者がいないため、演奏会のたびに声がかかるという理由からコントラバスを始めて、本格的に傾倒していったのはショスタコーヴィチの交響曲第10番を弾いてからだという。その理由は、それまでテンポを刻むための楽器だと思っていたコントラバスだが、10番冒頭でコントラバスがメロディーを響かせるという体験をした時、身震いがするほどの衝撃を受けたという。それ以来、コントラバスに取り憑かれたようで、その交響曲第10番を題材に、コントラバスがいかに活躍するかを説明するその姿に、ただただ頷いてその演奏を聴き入るのみ。とはいえ、やっぱこのデカイ楽器は移動に不便だから、やっぱバイオリンとかの方が人気なんだろうなぁと思わざるを得なかった。
その機動性豊かなバイオリンを引き下げて、コンマスと女性バイオリニストが演奏会に来ることができなかった知り合いの元に生演奏をしに行くというシーンなどには、じんわり涙腺を濡らしてしまった。粋な計らいプラス素晴らしい演奏─、あれをやられたら、自分だったら号泣だろう、まぁそんなこと望むべくもないけれど…。

今回、オランダ、アルゼンチン、南アフリカ、ロシアでの模様を収めたこの映画は、単に偉大な音楽を提示するという目論見にとどまらず、人々と音楽の携わり方というのも垣間見せてくれている。それを見るにつけ、つくづく思うのは、欧米やアフリカにおいて音楽というものは、まさにその地に根づいた文化であるということ。そして常にそれを羨望の眼差しで見る自分がいる。
日本における音楽というものは、何か別次元のものであり、その土地に根ざしているとは言い難い。唯一、沖縄の音楽などは完全に土着の文化と成り得ている観はあるが、日本の音楽は往々にしてそういう感覚は希薄だと思ってしまう。
アムステルダムの運河でのコンサートや、南アフリカのスティールドラム演奏などを見ていると、住民ほぼ全員が自分たちの音楽をこよなく愛しているという思いが否応なく伝わってくる。そしてその憧憬にただ涙するしかないのである。
単なる憧れでもいい、高尚なる芸術を眺めるだけでもいい、とにかく、彼らが奏でる音楽、願わくば、マーラー、ブルックナー、ショスタコーヴィチ、ストラビンスキー、いずれかの交響曲を生で聴きたいと思ってしまう映画であった。まぁ蓋然的帰結ではあるのだけれども、西洋クラシカル音楽に興味を持たぬ者は、たぶん寝るだろう、爆睡必至。
興味を持ったからって、オランダへ行っても生で聴けるかどうか分からないし、だいいち、どれだけのコストがかかるのかっていう話。そしてたとえ運良く来日公演に遭遇したとしても、その前に座ることさえ難しいのだから、何ともまぁ、悩ましいドキュメンタリーだなぁ…


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