公開日:2016年9月17日
配給:東京テアトル
時間:112分
監督:山下淳弘
原作:佐藤泰志
脚本:高田亮
出演:オダギリジョー(白岩義男)
蒼井優(田村聡)
松田翔太(代島和久)
北村有起(哉原浩一郎)
満島真之介(森由人)
松澤匠(島田晃)
鈴木常吉(勝間田憲一)
優香(尾形洋子)
塚本晋也(聡の父(声))
撮影:近藤龍人
製作:永田守
製作統括:小玉滋彦、余田光隆
エグゼクティブプロデューサー:麻生英輔
企画:菅原和博
プロデューサー:星野秀樹
アソシエイトプロデューサー:吉岡宏城、佐治幸宏、米窪信弥
キャスティングディレクター:元川益暢
ラインプロデューサー:野村邦彦
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
録音:吉田憲義
美術:井上心平
編集:今井大介
音楽:田中拓人
鑑賞日:2016年9月27日
場所:TOHOシネマズ流山おおたかの森 PREMIER C6
■ ストーリー
家庭をかえりみなかった男・白岩は、妻に見限られ、東京から故郷の函館に戻りつつも実家には顔を出さず、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた。
訓練校とアパートの往復、2本の缶ビールとコンビニ弁当の惰性の日々。なんの楽しみもなく、ただ働いて死ぬだけ、そう思っていた。
ある日、同じ職業訓練に通う仲間の代島とキャバクラに連れて行かれ、そこで鳥の動きを真似る風変わりな若いホステスと出会う─。名前は聡(さとし)。
「名前で苦労したけど親のことを悪くいわないで、頭悪いだけだから」そんな風に話す、どこか危うさを持つ美しい聡に、白岩は急速に強く惹かれていくが…。
自由と苦悶のはざまでもがく女の一途な魂にふれることで、男の鬱屈した心象は徐々に変化していくが、それまでもままならない時間をすごすしかない一組の男女。そして孤独と絶望しか知らなかった男たち。
▶ 映画館環境
TOHOシネマズ流山おおたかの森プレミアスクリーン
スクリーンサイズ3.5×8.3m、座席数58、小さな劇場
C6は前から3列目、通路側、スクリーン向かってほぼ真ん中
リクライニング付きの豪華な座席。荷物を置く場所も確保されているため、非常にゆったりと観賞できる劇場。かなり気に入った。
原作を読まずに観賞した。
ストーリーよりも出ている人や人間関係などに面白みを感じた。オダギリジョーや蒼井優、そして松田翔太など有名俳優にどうしても目がいってしまうわけだけれども、その熱い視線を決して裏切らない素晴らしいパフォーマンスを見せてくれて、それゆえに筋云々関係なく作品そのものを咀嚼できた。そしてまた、鈴木常吉など味のあるはまり役などにも魅せられて、非常に楽しい映画に見えた。
内容は、失業中の独り身の男が生まれ故郷に戻って失業手当をもらいながら一人暮らしをしているという、もしかしたら人生のどん底といえるような状態を描いているものだが、悲壮感などは全く感じない映画で、泣いても笑っても怒っても、なんだか淡々と展開していくような印象を持った。いわばフラットな映画であるが故に、見る者によって抱く感情が大きく異なるように思われるが、自分の場合は何だか楽観的な印象を強く持ったわけで、怒りや悲しみは喜びを引き立てるためにあるようにも思えてしまった。
展開そのものも、どん底から這い上がっていくようなところがあるから、なおさら負の要素満載でも肯定的に捉えることができたのかもしれない。
函館が舞台となっている作品だが、なぜかその色味が薄いように感じた。函館というよりも、都会の郊外といった印象。作品自体が特別に場所が重要なテーマとなっていないわけだから、例えオダギリジョーや蒼井優や松田翔太が函館の人とは見えなくても、違和感なくいい映画だとなと感じることができたわけだ。あくまで個人的な感想でしかないけれど──。
これはぜひとも原作をと思い、故・佐藤泰志の短編小説「オーバー・フェンス」を遅ればせながら読んでみた。
基本設定や流れのようなものは同じとはいえ、映画は原作をかなり脚色していたことが分かった。正直な話、小説を読む限り、オダギリジョーも蒼井優も松田翔太もイメージができなかった。蒼井優演じた“さとし”にいたっては、背景や役割・設定がかなり違っていた。原作を脚色することはよくあることだと思うし、筋や展開をがらりと変えてしまう例も少なくないわけだから、この映画での原作の違いをあれこれ言うつもりはない。むしろ、核となるようなテーマを尊重しながら、見事に変化させているのではないかと感心してしまったほどだ。
嫌な言い方をしてしまうと、有名実力派の俳優陣を生かすために脚色された作品なのかなと思ってしまうわけだが、無理に原作に合わせようとせずに、むしろ俳優の為人を尊重したことでナチュラル感を生み出していとも言える。エキセントリックに仕立て上げられた“聡”でさえも、しっかりと映画の中で生きていた、決して蒼井優がそこにいるわけでなく、ちゃんと聡が躍動していた。
筋やテーマは変わらずとも、映画と小説ではまるで違った印象を持った。だからなおさら、原作を読んでこの映画の良さを一層知ったような気がする。