エル・クラン

エル・クラン(2015年・アルゼンチン)
原題:El Clan
公開日:(アルゼンチン)2015年8月13日 (日本)2016年9月17日
配給:(アルゼンチン)20th Century Fox de Argentina (日本)シンカ、ブロードメディア・スタジオ
時間:110分

監督:パブロ・トラペロ
脚本:パブロ・トラペロ、ジュリアン・ロヨラ
出演:ギレルモ・フランチェラ(アルキメデス・プッチオ)
   ピーター・ランサーニ(アレハンドロ・プッチオ)
   ジゼル・モッタ(シルビア・プッチオ)
   フランコ・マシニ(ギジェルモ・プッチオ)
   リリー・ポポビッチ(エピファニア・プッチオ)
   ガストン・コッチャラーレ(マギラ・プッチオ)
   アントニア・ベンゴエチェア(アドリアナ・プッチオ)
   ステファニア・コエッセル(モニカ) ほか
製作:ウーゴ・シグマン
   マティアス・モステイリン
   アグスティン・アルモドバル
   ペドロ・アルモドバル
   エステル・ガルシア
   パブロ・トラペロ
撮影:フリアン・アペステギア
編集:アレハンドロ・カリーリョ、パブロ・トラペロ
音楽:セバスティアン・エスコフェット

鑑賞日:2016年9月27日
場所:TOHOシネマズ流山おおたかの森 スクリーン5 K13


■ INTRODUCTION(日本語公式HPより)
鬼才ペドロ・アルモドバル製作
ヴェネチア国際映画祭<銀獅子賞>受賞の話題作!

スペインの鬼才ペドロ・アルモドバルが製作し、2015年に開催された第72回ヴェネチア国際映画祭にて監督賞となる<銀獅子賞>を受賞。本賞では、北野武監督(『座頭市』)やキム・ギドク監督(『うつせみ』)、ポール・トーマス・アンダーソン監督(『ザ・マスター』)など各国を代表する監督たちが過去に受賞している。そして昨年、アルゼンチンの俊英パブロ・トラペロ監督は『エル・クラン』で受賞となり、名だたる監督に仲間入りを果たした。
ヴェネチアの銀獅子賞をはじめ、第10回アルゼンチンアカデミー賞では最多5部門(監督・新人男優・美術・衣装・録音)を受賞する快挙を遂げ、本国では大ヒット映画『人生スイッチ』をオープニング動員記録で抜き、300万人という驚異的な動員数で社会現象化。その勢いは止まず、第30回ゴヤ賞のイペロ・アメリカ映画賞、第40回トロント国際映画祭Platform Prize特別賞、第32回マイアミ国際映画祭観客賞を受賞し各国の映画祭で賛辞をうけた。さらには米・辛口批評家サイトRotten Tomatoesでも90%の満足度となった超話題作!
裕福で、周囲からも慕われる父、母、息子3人、娘2人の素敵な家族“プッチオ家”。幸せな暮らしをしている彼らのまわりで、ある日を境に、金持ちの家を狙った高額の身代金事件が多発。近所では不安が募る一方、変わらない生活を送るプッチオ家。彼らの裏には一体、何があるのか? 1983年にアルゼンチンで実際に起き、ちょっと裕福な普通の“家族”が全世界を震撼させた事件を完全映画化!! この映画のとんでもない結末にあなたの開いた口がふさがらない!!

■ STORY(日本語公式HPより)
二つの顔を持つ裕福な家族。彼らの稼ぎは、身代金だった──
1980年代アルゼンチン。史上最悪な独裁政治から7年以上が経ち、徐々に民主政治を取り戻していた時代。裕福で、近所からも慕われるプッチオ家は、父アルキメデス(ギレルモ・フランセーヤ)を筆頭に妻、息子3人、娘2人で幸せに暮らしていた。そんななか、マルピナス戦争(フォークランド紛争)の結果、政府が転覆。政府の情報管理官として働いていたアルキメデスは無職になってしまう。
ある日、長男アレハンドロ(ピーター・ラサーニ)は、同じラグビーチームの友人に車で家まで送ってもらっていた。そこへ突然、見知らぬ車が割り込んでくる。その車から出てきた銃を持った男たちは二人の頭に布を被せ、さらっていった。友人は車のトランクへ、アレハンドロは助手席へと放り込まれた。なぜか運転席の男は、乱暴されたアレハンドロを気遣う。そこで覆面を取ったのは、父アルキメデスだった─
翌日、アレハンドロが練習場へ到着すると、チームメイトが誘拐されたことが既に広まっていたが、誰一人アレハンドロを疑っている様子はない。皆、姿を消した友人を心配しており、複雑な心境になる。犯人が捕まらず街に不安な空気が流れるなか、プッチオ家はいつもと変わらない生活をしていた。夕飯の時間になると、アルキメデスは妻エピファニア(リリー・ポポヴィッチ)の作った料理を、キッチンではなく、2階の奥にある鍵のかかった部屋へと運んでいく。なんとその部屋は、プッチオ家に特設された<監禁部屋>だったのだ。
アルキメデスは人質に対し、身代金を用意させるため、家族あてに手紙を書くよう指示をする。その後、多額の身代金受け取りに成功したアルキメデスは、人質を監禁部屋から車のトランクへ運び、アレハンドロが見守るなかプッチオ家をあとにする。しかし翌日、アレハンドロはチームメイトから衝撃の事実を告げられる。なんと、人質になった友人は殺害されていたのだ。その夜アルキメデスに理由を聞くと、人質から逆に脅され、家族を守るため仕方なく殺害したことを打ち明けられた。さらに、「私を信じてほしい」と次の“仕事”に向け、協力を仰ぐのだった。
数日後。アレハンドロが経営するサーフショップの開店祝いで、町の人々やチームメイトに祝福されるプッチオ家。その姿は以前と変わることなく仲睦まじく、誰もが羨む光景だった。家族の秘密を知るものは、いまだ誰一人いなかったのだ。
ある日、アレハンドロが店番をしているときに若い女モニカ(ステファニア・コエッセル)がやってきた。モニカとアレハンドロは互いに惹かれあい、自然と恋人関係になった。店の経営も恋人との関係も順調なアレハンドロは普通の生活を望むようになり、次の“仕事”
から抜けることを父アルキメデスに伝えた。そこから徐々に、プッチオ家の歯車が狂い始める─

▶ 映画館環境
TOHOシネマズ流山おおたかの森スクリーン5
スクリーンサイズ3.6×8.5m、座席数127、やや小さな劇場。
K13は最後列、スクリーン向かって右寄り、上り階段正面の席。
真ん中より後方の席であれば、どこでも見やすい想像する。
平日、夕方の上映、空いてはいたが、それなりの観客がいた。
客層は、おっさん中心。

▶ 作品レビュー
1980年代のアルゼンチンで起こった実話をもとにした映画なので、70年代と80年代におけるアルゼンチンの社会状況を事前に予習して臨めば、より深く作品を鑑賞することが可能だとは思うが、それを知らずとも十分に内容は把握できるはず。
実際、自分もアルゼンチンが80年代まで軍事政権だったという事実は知らなかった。だからこそ終始大きな衝撃でもって観賞し得たともいえる。
結果的に軍政が招いた悲劇といえるのだろうか─、あるいは軍政の膿とでもいうのだろうか─、受け入れがたい実話が目の前で展開する。生きるための手段として誘拐を選択してしまう感覚は、どんな時代であれ尋常ではない。しかもそれが家族ぐるみとなると、このように映画のネタにもなってしまうのだろう。
確かに醜悪であり、そして滑稽だ。滑稽だが決して笑えない。そして嫌悪する。誘拐をして奪った金で平和な家庭を営んでいる姿に恐怖する。誘拐した者を家の地下に監禁し、その上で一家団欒が繰り広げられている状況に身震いする。
奇妙な実話を丁寧に描写しているだけのように思う。実話自体が衝撃的であるわけだから、それだけで十分に力強さがある。ただ、それをすべて受け入れられるかどうかは別の話。丁寧に語られるその映像を見ていけばいくほどに、彼らの行為に目を覆いたくなる。といいつつも、しっかりと凝視して最後まで見てしまったわけだが…。
食うための誘拐に大義名分など全くなく、ただ欲望のためでしかないということがよく描かれている。醜悪なものを醜悪として描写していて、映画だからといって決して美化することなく─いや美化しているのかもしれないけれど、それが逆に愚行を強調しているように見えてくると言った方が正確か─。意図的なのかどうかは分からないけれども、史上最悪な独裁政治が史上最悪の犯罪者を生み出したという思いが映画の中ににじみ出ている。それだから、正直、この映画は好きになれない。好きになれなくても、最後まで凝視し、衝撃を受け、作品に対して強い嫌悪感を持つ、それだけでこの作品の価値があるということなのかもしれない。
個人的には、猟奇的な事件事故や悲惨な大事件を描いた物語より、平穏で平凡な日常を描いた物語の方が何倍も好むところではあるけれど、実際に見て楽しんでいるのは悲しいかな前者なのかもしれない、この作品のように─。


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