お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました(2015年・日本)
公開日:2016年1月23日
配給:シマフィルム
時間:102分
監督:遠藤ミチロウ
プロデューサー:志摩敏樹
出演:遠藤ミチロウ、THE STALIN Z、THE STALIN 246、三角みづ紀、盛島貴男、竹原ピストル、大友良英、AZUMI、遠藤家のみなさま、遠藤チエほか
撮影:高木風太
録音:松野泉
製作進行:酒井力
撮影協力:柴田剛
鑑賞日:2016年1月26日
場所:K's cinema 自由席
■ ストーリー
1980年にザ・スターリンを結成し、豚の臓物、爆竹を客席に投下、全裸でステージから放尿、といった過激なパフォーマンスを繰り広げたミュージシャン遠藤ミチロウ。吉本隆明などが評価し、多くの後進の世代をも魅了した。バンドを解散した後も、現在に至るまで、ソロを中心に音楽活動を続けている。
60才を迎えた2011年、ザ・スターリン復活ライブを決行し、そして全国を巡る自身の還暦ソロツアーを敢行する。そのさなか、東日本大震災が発生、それまで故郷を顧みることがなかった遠藤は、故郷の地で同郷の仲間とプロジェクトFUKUSHIMA!を始動させる。
自身のアイデンティティたる家族へ眼差しを向け、第二次大戦でガダルカナル、フィリピンと激戦地に赴いた父への畏敬にみちた思い、自身の代表曲「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました。」にも強烈に込められた母へのアンビバレントな感情が赤裸々に語られる。
現在も盛んにライブ活動をする遠藤ミチロウ。行く先々での人々との対話も描かれる。
時代をつくり、駆け抜け続ける遠藤ミチロウというミュージシャン=ひとりの人間としてのシンプルにして力強い生き様は、今も多くの人々を強烈に惹きつけ続ける。
血肉を引き裂くようなヴォイスシャウト。還暦(60才)を超えてもなお躍動する、その肉体と声。
なぜ歌い続けるのか?なぜ旅を続けるのか?
過激なライブパフォーマンスと相反するかのような実直な語りで、男は明かす。
遠藤は、膠原病を患い入院。一時はライブ活動の長期的停止を余儀なくされたが、映画の公開を迎え、見事に復帰。「THE END」「羊歯明神」という新たなバンドも結成、様々な活動を始動し、生命を燃やし続ける。
▶ 映画館環境
K's cinemaは座席数84の小劇場。全席自由で、見た感じどこに座ってもいいような気がした。真ん中とか前とか後とか、あまり意味をなさないと思うので、空いていてゆったりできる席を選択するのがベスト。
平日、午後一の上映。20、30人はいただろうか。意外といたのでちょっとびっくり。ミュージシャンのカリスマ性なのか映画館のカリスマ性なのか…。
▶ 作品レビュー
遠藤ミチロウもThe Stalinもよく知らなかったし、登場してくるミュージシャンやアーティストも大友良英以外ほとんど知らない人ばかり。しかし、非常に面白いドキュメンタリー映画だったし、流れる音楽も気に入った。
遠藤ミチロウという人が何だか好きになりました。あ、恋とかじゃなくて人間的にっていう意味ですよ、あくまで。
何だか、言っている事とやっている事が矛盾していたり、例えば「オレ本当は人前に出たいとか思わない」という趣旨の発言をしていたと記憶するけど、映画に出て、しかもいまだに多くのライブ活動続けるその行動に全く説得力なし。でも、自分が持っている恥部とか逡巡なんかを吐露しているところを見ると、その言葉は嘘偽りないんだなーって理解できる。矛盾している世界を揺れながら生き続けている唯一無二のアーティスト。
といいながらも、ひとりアコギで熱く歌っている姿を見ると何だか某有名アーティストに見えてしまうんですけど…。あの細マッチョな肉体が似てるのかも─。
それにしても還暦を迎えた人とは思えない熱を感じるし、還暦らしい厚も感じるし、ぶっちゃけ圧も感じてしまう。シャウトが命の叫びにしか聞こえなくて、なんだか泣けちゃいました。
福島県あずま球場でのThe Stalin 246の映像などには心を打たれる。映像自体、ぶれるし揺れるし酷いもの。でも、演奏は素晴らしいし、遠藤ミチロウのパフォーマンスもキレキレで、この人ここで死んじゃうんじゃないかっていうくらいの勢い。観客がそれほど入っていなくて空席が目立つ中、それでも彼らを見に来てくれている人たちに懸命に応えているアーティストの姿に感動してしまった。
映像とか展開とかつなぎなんていうものは、この映画ではどうでもいい。ホントはどうでもよくないんだけど、遠藤ミチロウという個性を基準に構成していけば、成立してしまうところが、非常に面白いところ。
本当に自ら監督しているのかと疑問に思ってしまうくらいに、ありのままの自分をさらけ出す覚悟を持って臨んでいる姿勢を感じる。まさに、それが見事に映像に記録されているわけだから、あとはもう上手いこと仕上げればいいだけだし、そういった意味で技術的なことは二の次でいいと感じたわけだ。
そうはいっても、音だけには何かしらのこだわりを感じる。インタビューにしろ音楽にしろ、音をメインにしている意図は伝わってくる。いつの間にか、耳でよく聴き、目で補うという捉え方をしていたように思う。悪くいえば、それは絵的にそれほど面白さを感じなかったということなんだけど、監督にしてみたらまず音ありきなんだろうから、これはこれで良しなんだろう。
実際に流れてきた音楽も本当にいいと感じたし、個人的には、竹原ピストルの「カノン」とかThe Stalin 246の「虫」とか「ワルシャワの幻想」とか、最高だったなー。
自分も東北の田舎もんだし、里帰りする・しないとか親不孝ものとか、そんな感情がよく理解できたし、実際に遠藤ミチロウが実家に帰って母親などと会話するシーンなどは本当に笑えた。自分には、とてもじゃないけどあんな風には曝せない。
遠藤ミチロウのとてつもない勇気と行動力がこの映画にはある。いや、すべてがあるといっても言い過ぎじゃないだろう。
遠藤ミチロウの魂を受け取りに行け!と言いたいところなんだけれど、まぁ、何かに飽き飽きしているんだったら、これを見に行って刺激を受けてくれ!っていう方が無難かな。
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