リップヴァンウィンクルの花嫁

リップヴァンウィンクルの花嫁(2016年・日本)
公開日:2016年3月26日
配給:東映
時間:180分

監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
出演:黒木華(皆川七海)
   綾野剛(安室)
   Cocco(里中真白)
   原日出子(鶴岡カヤ子)
   地曵豪(鶴岡鉄也)
   和田聰宏(高嶋優人)
   毬谷友子(皆川晴海)
   佐生有語(滑)
   夏目ナナ(恒吉冴子)
   金田明夫(皆川博徳)
   りりィ(里中珠代)
   野間口徹ほか
エグゼクティブプロデューサー:杉田成道
プロデューサー:宮川朋之、水野昌、紀伊宗之
撮影:神戸千木
美術:部谷京子
スタイリスト:申谷弘美
メイク:外丸愛
音楽:桑原まこ

鑑賞日:2016年3月29日
場所:新宿バルト9 シアター3 E-14


■ ストーリー
臨時教員をしながら教諭の道を志す皆川七海(黒木華)。SNSと知り合った鶴岡鉄也(地曵豪)と何となく付き合い、そして結婚する。結婚式を挙げる際に七海は、出席者の体裁を取り繕って、離婚している両親を夫婦として出席させ、さらに親戚や知人も少なかったため、SNSで知った便利屋と称する安室(綾野剛)に偽装した友人知人の出席を依頼する。
晴れて夫婦となった七海と鉄也の新婚生活が始まる。臨時教員をクビになっていた七海は専業主婦となっていた。七海が家庭を守っていたある昼下がり、鉄也が自分の彼女と浮気をしていると主張する一人の男が押しかけてくる。夫の浮気を信じられなかった七海だったが、その真偽を知るべく再び何でも屋の安室に夫の素行調査を依頼する。そしてさらに、少しでも情報を得たいとの思いで、押しかけてきた男の呼び出しでホテルの一室へと訪れる。そこで半ば強姦されそうになる七海。とっさに、トイレへと逃げ込みあの安室へ助けのSNSを送る。すぐに助けに向かう安室。しかし、そこでの男と七海の状況は隠しカメラで撮影されており、それを仕込んだのも安室であった。強姦する男も安室の仕込みで、安室が現れることにより七海の恐怖は完全に取り払われた。しかし、その恐怖は安室がつくり出していたということを七海は知らない。
その日を機に、七海と鉄也の夫婦生活に小さな亀裂が生まれ出す。
鉄也の実家で法事が行われた日、七海は鉄也の母親(原日出子)からホテルで密会している七海と男という名目である映像を見せられる。七海にとっては恐怖でしかなかったあの出来事が、まるで情事であるかのように仕立て上げられていた。さらに鉄也の母親は、あの挙式での偽装された両親のことと雇われ参加者についても畳み掛けて詰問する。何も言い返せない七海は涙ながらに実家を追い出される。翌日には鉄也から電話があり別れを告げられる。
行く当てもないまま七海は家を出て、安室に助けの電話をかけるも途中で切れ、たどり着いたビジネスホテルで夜露を凌ぐ。生計の当てもない七海は、そこで働くことを直訴し、そこで住み込みで働くことになる。そしてそこに安室がやってくる。
安室はもっと効率的にお金を手に入れることを提案する。例えば、結婚式で友人や知人になりきるといったこと─。そこで七海は偽装家族の一員を演じることになる。七海は姉妹の妹役で、その姉役が里中真白(Cocco)だった。二人は不思議な親近感を持つ。互いのSNSのハンドルネームを交換し、そしてリップヴァンウィンクルはカンパネルラを残したまま姿を消す。
七海が真白に再び会ったのは、安室が紹介してくれた次の仕事がきっかけだった。その仕事とは、ある豪邸に住み込みでメイドとして働くことだった。邸宅の持ち主は留守にしていて、もうひとりのメイドと共に家を管理することが任務であると七海は聞かされた。そして、そのもうひとりのメイドとは真白であったのだ。
真白との奇妙な生活が始まった七海。家の管理をしながら、その家を自由に使うこともでき、それでいながら多額の報酬を手にする。七海はその不思議な背景にある秘密を知っていく。メイド仲間の真白は何者なのか、そしてこの豪邸の所有者とは、七海を雇っているのはいったい何者なのか─。それを知ったとき再びリップヴァンウィンクルはカンパネルラのもとから姿を消す。決して消えることがない何かを残して─。


▶ 映画館環境
新宿バルト9のシアター3は座席数148は中規模の劇場か─
座席E-14は通路側の席。スクリーン向かって右端。位置的に申し分ない。座席の列の間がそれほど広くないため、真ん中に座るよりも通路側の方が気持ち的に楽。
深夜の上映、十数人ほどいただろうか。意外といる印象。まぁ見終わったときには、もっといてもいいのにと思ったわけだが…。


▶ 作品レビュー
長いし、嫉妬なのか分からないが心にもないような評価も散見され、あまり世の中に広められていないし、正直、見るのをたじろいだ。必ず見ようと思っていた自分ですらそうなのだから、岩井俊二信者でなければすすんで見ようとしないかもしれない。ちなみに、自分は信者でもないし、どちらかというと嫉妬を感じる側、全く嫉妬を感じる必要もない凡人なのだけれど…
変な映画だなーと思った。でも、完璧な世界観が構築されていて、変が変じゃなく終幕してしまった。そしてその変さかげんに泣かされたりしたわけだ。
そればかりではなく、かなり笑ってしまったし、笑わそうとしているんではなく、これ面白いだろうなぁと思って作っている意思が伝わってきて思わず笑うといった感じ。
とくに、結婚式で世界的あの人が新郎役に登場するシーンなんかには、何気になかなかできることじゃないなと感心しながらも、大爆笑。
有名な役者を起用するならするなりに、その人の個性とかプライベートのことまであからさまにしてしまう演出というか演技なのかもしれないけれど、面白い情報を積極的に提供してくれて楽しめた。逆にそれが邪魔だと言う人もいるだろう。
特別なことはあまりなかった映画。自然に流れていき、不思議な話であるけれども、あるかもしれない事柄が並べられているだけで、革新的なものは何もない(たぶん…)。ちゃんと起承転結あって、暴力もセックスもない清く正しい映画。血も流れないし。だからいいとか悪いとかではなくて、制作する側の視点や思考をしっかりと提示されている訳で、それをしっかり受け止めた上で評価というか好き嫌いを判断して欲しい。
自分はこの映画が非常に好き。手持ちカメラ、フィックス、定点カメラ監視カメラ、決して何かに固執するのではなく、美しい映像、リアルな映像を作り出すためにそれらをはじめとする駆使しているところが目に見えて分かるし、音とか編集も恐ろしく自然に感じてしまって、これが何とかワールドなんだなぁと実感してしまった。
それにしても、Coccoと黒木華のセリフはどこまで文字であったのか非常に気になった。とくにCoccoの語りなんか聞いてると、あの是枝監督のドキュメンタリーを彷彿とさせて笑ってしまったし、ああCoccoがあそこにいるーと思いつつウルウルさせられた。
カッコつけたタイトルだとしか思えなかったこの映画の題名もいいタイトルだなと心から思えるし、気になる人はぜひ見るべき。

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