もしも建物が話せたら(2014年/ドイツ・デンマーク・ノルウェー・オーストリア・フランス・アメリカ・日本合作)
原題:Cathedrals of Culture
公開日:(独)2014年5月29日 (日)2016年2月20日
配給:(独)NFP Marketing & Distribution (日)アップリンク
時間:165分
監督:ヴィム・ヴェンダース
ミハエル・グラウガー
マイケル・マドセン
ロバート・レッドフォード
マルグレート・オリン
カリム・アイノズ
制作:アーウィン・M・シュミット、ジャン=ピエロ・リンゲル
制作総指揮:ヴィム・ヴェンダース
鑑賞日:2016年3月1日
場所:アップリンク スクリーン3
■ ストーリー
「もしも建物が話せたら、何を語るだろう?」というコンセプトで、世界的に名のある監督6人が独自の視点で建物を捉えた、オムニバス形式のドキュメンタリー映画。
ヴィム・ヴェンダース監督「ベルリン・フィルハーモニー」(ドイツ・ベルリン)
ミハエル・グラウガー監督「ロシア国立図書館」(ロシア・サンクトペテルブルク)
マイケル・マドセン監督「ハルデン刑務所」(ノルウェー・ハルデン)
ロバート・レッドフォード監督「ソーク研究所」(アメリカ・サンディエゴ)
マルグレート・オリン監督「オスロ・オペラハウス」(ノルウェー・オスロ)
カリム・アイノズ監督「ポンピドゥー・センター」(フランス・パリ)
6者6様の建物の物語が紡ぎ出される。
ヴィム・ヴェンダースが自国の言わずと知れた世界的交響楽団の本拠地を─
そして1862年設立の歴史ある図書館を生涯をドキュメンタリー制作に捧げたオーストリア監督ミハエル・グラウガーが─
そして出所者の再犯率がヨーロッパで最も少ないといわれるハルデン刑務所をデンマーク人監督マイケル・マドセンが─
ロバート・レッドフォード監督は自信がポリオにかかった経験からその予防接種を開発したソーク研究所を─
マルグレート・オリン監督は自国のオスロ・オペラハウスを─
そして最後を飾るのはブラジル人監督カリム・アイノズ、自信が17歳の時にパリに移り住んだこともあり、ポンピドゥー・センターを選択─
あくまで建物が主役の物語。
▶ 映画館環境
アップリンクのスクリーン3は40座席でスクリーンサイズ120インチと非常に小さな劇場。3つある劇場の中で一番小さい。どこに座っても見た目変わらない。ただ、1、2列目は半ば座椅子のようなものであり低すぎて座りづらい。個人的には3、4列目がベストと見た。
席は9割方埋まっていたように思う。客層は極めて若かった。
▶ 作品レビュー
いつかは行きたいベルリンフィルへ─あの建物しかり、ぜひともあそこであそこの管弦楽団での交響曲を体感してみたいものである。そういう思いが強いが故に、かなりの興味を持って見始めることができたのだが、個人的な嗜好を切り離して映像を眺めてみると、果たしてこの作品をどれだけの人が面白いと思って見ることができるのかと不安になってしまった。
確かに、何もない原っぱに立てられたこと、竣工途中にベルリンの壁が突如として築き上げられたこと、そしてその奇妙な形と音の関係など、興味深い話題も多いものの、非常にゆったりした展開と常に説明的な語りが続き、尚且つ映像的な刺激が非常に少ない。過剰な演出など必要がないようにも思うのだが、あまりにも特徴的な建物であるが故に、作家が自身の表現を前面に出すのをためらっているように感じてしまう。個人的には、特徴ある形状を活用した積極的絵作りを期待したのだが、極力抑えられている。その良し悪しは人それぞれだとは思うけれど、自分としては物足らない。
次のグラウガー監督の「ロシア国立図書館」において、その懸念がまんまとはまってしまう。哲学的というか詩的というか、非常に抽象的な語り口で、特徴的な建物の映像が紡ぎ出されているのだが、個人的興味が全くそこには注がれず、ただただ暗闇へ引きずり込まれるような思いに至る。本好きにはたまらないのだろうか…
3話目のハルデン刑務所には多少救われた。建物の説明はほぼなく、マイケル・マドセン監督が思いのままに自身の絵を構築しようとしていて、見ていて飽きない。設定も、建物が終始擬人化されているという切り口という極めてシンプルなものであり、しかもその語りがプロによるものではないという演出に、まんまと引き込まれていく。まさに普段何もしゃべらないものがぎこちなく語っている雰囲気が出ていて、それだけで力強い説得力を持っていたように思う。それ故、囚人がモデルのようなポーズを決めてキッチリと画面に収まっていようとも、何の違和感もなく楽しめてしまう。映像自体は非常に冷たい無機質な印象なのだが、それに反して全体的に不思議な包容力があり、何だかその刑務所で生活してみたいなという禁断の思いをも感じてしまった。気持ち良く4話目へと続く─
ようやくメイン(?)のロバート・レッドフォード。でも、個人的には彼が作った作品よりも、彼が出ている作品の方にこそ価値を見いだしてしまうわけで、そういった意味では、このソーク研究所などもそれほどの期待もなく、あわよくば監督出演もあるかもとの淡い期待だけで根気よく集中するのだけれども、当然ながらむなしい結果となり、映像にも建物そのものにも特別な要素が感じられず、なかなかの苦行を強いられた。構成は建物の歴史と偉業を淡々と語るもの。まさにドキュメント。それ故に、特筆すべきものは何も無かったように思ってしまう。
5話目、オスロ・オペラハウス。最後までどんな構造になっているのか全く分からないくらい、不思議に魅力的な白い建物。北欧にピッタリといった印象で、あらゆる人に愛されているというニュアンスが伝わってくる。極力説明的な語りなどは抑えられており、オペラやバレエ、パントマイムといった要素を前面にして、抽象的に展開していく。芸術的に非常に魅力的な要素が揃ってはいるものの、あまりに捉え所がなく、見ている側としては言い知れぬ不安に襲われてしまった。
ラストを飾るのは文句なしのポンピドゥー。改めてその際立った存在感を見せられた気がする。これを1970年代のパリで造ろうとしたこと自体がアートと言えよう。建物こそが芸術なのだと主張するその切り口には、ただただ納得するばかり。そこの入り口はまさに空港ゲートのようなもので、そこを通り抜けるとあらゆるアートへの旅が始まるわけだ。建物を鑑賞し、作品を鑑賞し、そしてパリの街を鑑賞する─アートを生み出し続ける街の、誇りと威厳がそこには存在していた。斬新な映像や構成などは皆無ではあったけれども、これほどアートの威圧があれば致し方ないだろう。それでもそれをぶっ壊すくらいのチャレンジを、見ている側は求めてしまうのだが…
全体的に、あまりにもゆったりし過ぎていて、しかも作品一つ一つの雰囲気がほぼ同じでであるが故に、退屈な作品であると見做さざるを得ない。オムニバスで、確かに6者6用の作品が並んではいると認識はできるものの、その意義をあまり見出せない。ヴェンダースが一人で6つの建物を描いたとしても、あまり変わらない気がする。
確かに、気品ある高貴な映画だとは思うけれども、果たしてどれだけの人がこれを楽しむことができるのかと考えたとき、否応なくこの作品の価値は下がってしまうことだろう。ただ、学術的価値、芸術的価値は大いにあるだろう。それ故に、単に楽しませるためのものではないことは十二分に承知した上で、尚且つ、もっと面白いオムニバス映画にできなかったものかと思ってしまうのである。
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