ミスター・ノー・プロブレム(2016年・中国)
原題:Mr. No Problem [ 不成问题的问题 ]
公開日:(日)2016年10月29日(第29回東京国際映画祭)
制作会社:Mare Nostrum Productions,Youth Film Studio
時間:144分 モノクロ
監督:メイ・フォン 梅峰
原作:老舎
脚本:メイ・フォン 梅峰
出演:ファン・ウェイ(ディン・ウーユアン)
イン・タオ(ミン・シア)
シー・イーホン(シェン・ユエメイ)
チャン・チャオ(チン・ミャオジャイ)
ワン・ハンバン(ヨウ・ターシン)
ワン・ズートン(トン・イーファン) ほか
エグゼクティブ・プロデューサー:ユイ・ジエンホン
プロデューサー:ホウ・グアンミン、ウー・マンファン
共同プロデューサー:グオ・ヨンハオ、チョウ・キョン
編集:リャオ・チンソン
撮影監督:チュー・ジンジン
鑑賞日:2016年11月2日
場所:TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン9 D-9
■ 作品解説
重慶のシューファー農場は、生産性は高いが利益につながらない。雇われ番頭のディンは、収入を増やすために自称芸術家のチンに空き部屋を貸すことにする。ディンと従業員たちの癒着に不満を抱いた農場所有者は、ディンをクビにしようとするが、便宜を受けているチンが反対する。それでも所有者一家は近代的発想を持つ新しい経営者を雇用することにし、騒ぎは大きくなっていく。
ロウ・イエ監督の脚本家として名高いメイ・フォンは、自らの初監督作として、中国近代文学において魯迅と並び称される作家である老舎が、1943年に発表した短編小説を選んだ。富裕家族と番頭さん、軽薄な若者に、近代的経営者など、個性的な面々が行き交い、軽やかな味わいの作品世界を彩っていく。戦火の気配は遠くに感じるのみであり、一種のパラダイスの中で進行する物語が、来るべき新時代の空気を予見する。作品のトーンとして「リアリズムと印象派の釣り合いを求めた」と監督は語り、様式美を備えた品格あるモノクロ映像として見事に結実している。監督としての確かな力量を証明する堂々たるデビュー作である。
第29回東京国際映画祭
最優秀芸術貢献賞 Award for Best Artistic Conrtribution 受賞
▶ 映画館環境
第29回東京国際映画祭オープニング作品
TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン9
スクリーンサイズ5.3×12.7m、座席数258
D-9は前から4列目、スクリーン向かってやや左寄り、スクリーンが大きいためやや近すぎるかもしれない。迫力は十分だが少々疲れる。
朝早い上映のためか空席が目立った。
▶ 作品レビュー
長いうえに静的なロングショットの多様、しかも白黒、典型的な眠気を誘う芸術映画。だからこその最優秀芸術貢献賞の受賞なのだろうか…申し訳ないけれど、自分にはこの賞の受賞をこんな皮肉としてとしか捉えることができない。
決して作品を卑下しているのではなく、敢えて選択した勇気に対して高尚なレッテル貼るようなことをするのは、どうなのかなーという個人的な愚問、いや疑問を感じたまでのこと。
率直に言うと、自分はこの作品に好感を持てた。その理由は、絵的な芸術性などが優れていたと感じたからではなく、作品の中に漂う人間味を実に見事に表現していると感じたためだ。敢えて色味を消した絵づくりも、人と人との関係性を色濃く描き出すためのもの(と勝手に想像する)─ちょうど小津映画のごとく…ああ、だから芸術貢献賞?(とこれもまた勝手に想像)、引用が多少古くさいが─。
そもそも作風が自体が古くさいく、それは時代の雰囲気を大事にしたからこそと(勝手に)思うわけで、古くさくした意図はそれ以外にないだろう。だからといって芸術性がないなどと言うのではなく、結果として芸術的であったかどうか─個人的にはそういった部分を見出すことができなかっただけのこと。
まあ、どうでもいいことであり、受賞は紛れもなく栄誉なこと。ただ、その賞のためにこの作品が勘違いされないかと危惧するところではある─そんなこと言う立場ではないけれど…。
原作は老舎の短編ということだが、老舎という作家すら知らず。魯迅と並び称される作家と記されていたけれど、魯迅を知れど老舎は知らず。今度読もう。
監督はなぜこの老舎の短編を映画にしようと思ったのか次のように語っていた。
北京出身の老舎が描く作品は北京の事柄が多く、都会を離れた農村のことを書いたものを他に知らない。老舎の作品でも特殊なものであり、それ故に強く惹かれていった──
正確ではないかもしれないが、そういった趣旨のことを言っていた。
何となく、白黒、ロングショットの方向性が見え隠れするコメントのような気がした。シンプルな絵づくり、そして題名「ミスター・ノー・プロブレム」、ただその情報だけがこの作品のすべてのような気がする。牧歌的な世界の中で、小さなユーモアが展開していく、ただそれだけの作品。それだけをもとに観賞すべき作品だと個人的には思う。芸術性がどうのこうのとか、原作は抗日運動に尽力しながら文革の犠牲となった悲劇の大作家・老舎が書いたものとかという知識は、映画を見終わった後に改めて参考にしたり比較検証した方がいいのかもしれない。
逆に、そういった事前の知識が豊富であれば、この作品をアーティスティックな作品だと思えるのかもしれない。そう思えなかったのは単に自分が無知なだけ…
それでも、個人的にはこの映画の本質は芸術性なんかよりも人間の機微を堪能することにあると思う。
いずれにせよ、淡々と動きの少ない映像が長く続くだけに、相当の覚悟がいる映画であることは間違いない。強い意志を持つ意味においても最優秀芸術貢献賞という冠が役に立つかも…って最後まで賞に関しては皮肉れた見方で申し訳ありません。
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