ハート・オブ・ドッグ 犬が教えてくれた人生の練習(2015年・アメリカ)
原題:Heart of a Dog
公開日:(米)2015年9月4日 Telluride Film Festival(日)2016年10月22日
配給:(米)Abramorama (日)テレビマンユニオン
時間:76分
監督:ローリー・アンダーソン
出演:アーチー/ラットテリア
ガット―/ラットテリア
ロラベル/ラットテリア
リトル・ウィル/ボーダーテリア
ニトロ/ジャーマン・シェパード
エッタ/プードル
フン・フン・チン/犬の散歩をする人
ジェニー・マルダー/妻
マット・ヴェガ/夫
アーロ・ウィルナー/少年
カート・グテンブルナー/シェフ
ジュリアン・シュナーベル/画家
ウィリー・フリードマン/アヒルに当たる男
エリザベス・ワイス/犬の調教師
ジェイソン・バーグ/獣医
エブリン・フレダー/おばあさん
ダスティン・ディファ/ゴードン・マッタ・クラーク
ルー・リード/医師
ボブ・カーリー/医師
ゴードン・マッタ・クラーク/本人役
ティナ・ジルアード/本人役
ロザリア・ディーン・ハドソン/赤ちゃん
ルーシー・ハフィッツ/プールの少女
サシャ・グロスマン/看護婦
アレックス・カウフマン/医師
ジェシカ・アイリッシュ/看護婦
エリザベス・ワイマー/看護婦
ポール・デヴィッドソン/農夫
マーガレット・ハフィッツ/農夫の妻
サム・オシュビン/農夫の息子
チャーリー・ハフィッツ/小児病棟の患者
ピエール・リッチーズ/牧師
製作:ダン・ジャンビー、ローリー・アンダーソン
撮影:ローリー・アンダーソン、トシアキ・オザワ、 ジョシュ・ズッカー ・プルーダ
作画:ローリー・アンダーソン
編集:メロディ・ロンドン、キャサリン・ノルフィ
挿入曲: ルー・リード“Turning Time Around”
鑑賞日:2016年11月8日
場所:イメージフォーラム
■ ABOUT THE MOVIE (日本語公式HPより)
ヴェネチア映画祭コンペティション正式出品
NYタイムズが選ぶ2015年ベスト10に選出!
故ルー・リードの妻である音楽家のローリー・アンダーソン監督が贈る
「愛と死」にまつわるシネマ的エッセイ(ドキュメンタリー)
NYのアートシーンで70年代から活躍し続ける音楽家ローリー・アンダーソン。本作は彼女と夫ルー・リードが飼っていた愛犬ロラベルとの日々を通して「愛と死」「アメリカの今」を綴ったシネマ的エッセイ。幼い日の記憶、他愛のないビデオ日記、母への複雑な感情、愛する人との別れや思い出の断片が、過去と現在、現実と空想を超えたコラージュのように、ときにユーモラスに、ときに抒情的に描かれます。
本作は2012年に制作が始まっていたものの、ルー・リードの闘病と死去で中断。その後、彼に捧げる長編映画として完成しました。全編に渡る美しい映像とアンダーソン自身による朗読は、様々な喪失を乗り越えるヒントが見つかる「人生の練習帳」ともいえる本作。私たちが生きる世界は複雑で息苦しくなっているかもしれない。それでも “物語る”ことで私たちは自由であり続ける。そんなメッ セージが込められた全ての生命への “共感(empathy)”の讃歌となっています。
■ LAURIE ANDERSON (日本語公式HPより)
監督・脚本・音楽:ローリー・アンダーソン
L A U R I E A N D E R S O N
1947年イリノイ州 シカゴ生まれ。7歳よりバイオリンを習い、1961 年にシカゴ・ユース・オーケストラに入団。1969年バーナード大学美術史学科卒業。1972年コロンビア大学大学院(彫刻専攻)修士課程修了
70 年代にミニマル・アートやコンセプチュアル・アートの影響を受けた彫刻を制作し、美術雑誌に批評を執筆。72 年、最初のパフォーマンス作品≪カー・ホーン・コンサート≫。以降、映像制作や改造したバイ オリンを使ったパフォーマンスなどを行う。81年、NY のレーベル 110(ワン・テン)から≪オー・スー パーマン≫を発売。
80 年代半ばからは≪ミスター・ハートブレイク≫(1984)≪エンプティ・プレイセ ズ≫(1990)など大規模なパフォーマンスを手掛け、ピーター・ガブリエル、ブライアン・イーノ、ヴィム・ヴェンダースなどとのコラボレーションもはじめる。日本でも2005年に『愛・地球博』でインスタレーションなどを発表し、世界巡回展『時間の記憶』が NTTインターコミュニケーションセンターで開催された。
1992年、ルー・リードとドイツの音楽フェスティバルで出会い、長年パートナーとして暮らした後、 2008年に結婚。しかし 2013 年、ルー・リード死去(享年 71 歳)。2016 年 7 月 30 日、音楽と映画と朗読によるルー・リード追悼イベントを NY のリンカーンセンターで開催する。
ルー・リード(1942−2013)
L O U R E E D
60年代、アンディ・ウォーホルと共に活動した伝説的バンド「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」で活躍。ソロでも多くの名盤を発表し、アメリカ文化に多大な影響を及ぼした音楽家。2013年10月27日死去。享年71歳。今夏7月30日にはNYで大規模な追悼イベントが開催。
▶ 映画館環境
平日の朝上映ということだけあって、非常に空いていた。
▶ 作品レビュー
ドキュメンタリーとか映像ポエムといえるかもしれないが、アートムービーという方が適切かもしれない。ただ、個人的にはあまり好きな表現ではない。というのも、アート○○と冠を付けると一気に退屈なものに思えてしまうから──まぁ個人的な見解でしかないけれど…。
ルー・リードはよく知るところではあるが、特にファンでもないし、彼にまつわる事柄においても特段思い入れもない。自分としては純粋に映像に惹かれて観賞に至った作品。予告などで流される映像が非常に魅力的に感じて、そしてそれを裏切ることがないくらいに見事な映像に魅了されてしまった。
レビューなどを見ると、ルー・リードという名に騙されたという記述も見られるし、事実、作品の中で彼の表現はほんのわずかであり、それほど作品に影響を及ぼすようなものではないので、彼のエッセンスを求めて足を運んだ人にとってみれば不満以外の何ものでもないだろう。映画の宣伝においてもルー・リードという文言を結構使っているから尚更か──。
ルー・リードは部分的な要素であるとしても、彼の死がこの作品に与えた影響は少なくないと思うわけで、そういった意識で作品を観賞すると、ルー・リード目的でもそれほど不満を感じることはないと思うのだが、それでもダメという人はきっと何か確固たる物語を欲しているのだと思うし、アートムービーというと恐らく拒絶反応すら覚えるかもしれない。
この映画をアートムービーと謳っているプロモーションは皆無だが、これは紛れもなくアートムービーであり、ローリー・アンダーソンが創り出すイメージが自由気ままに交錯して行くだけの作品だ。自由で取り留めのないアートムービーという記述自体に拒否反応を起こすのであれば、決して見ない方がいい。恐らく時間の無駄であろう。
人の心の原風景、犬目線でのイメージ風景、ローリー・アンダーソンという人物の思い出、あらゆる映像と、終始ローリー・アンダーソンの声でもって語られるポエムが補完し合いながら展開していく。
観賞後どんな作品だったか具体的に思い出すことができないくらいに、複雑に映像が絡み合っていた。単に美しいだけではなく、味わい深い絵が次々と重ね合っていき、いつの間にか一人のアーティストから紡ぎ出される膨大なイメージに包み込まれていた。
犬の気持ち──幾多の悲しみを乗り越えてたどり着いた境地がそれだったのかもしれない。個人的なことを言うと、むかし母親が犬に生まれ変わりたいというようなことを言っていたことを思い出してしまった。とはいえ、決して感傷的な気持ちになるような映画ではなく、不思議と楽しい作品だったという印象がある。
確かに内容は全体において、いちアーティストの郷愁的なものを強く漂わせているけれども、決して涙を誘うものではないし、むしろ笑みがこぼれてしまうくらい楽しい作品だったという印象。
生を持つものであれば死というものは決して避けられないわけで、それをどう捉え受け止めていくか──ハート・オブ・ドッグ──それがローリー・アンダーソンにとっての人生を乗り越えていくヒントであったのかもしれない。
ビデオドラッグがごとく様々な映像を浴びせられたわけだが、最終的には哲学的な何かを感じさせるに至る、これまでにないアートムービーであった。
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